義浩は毎年春から晩秋まで、山の中で漆を採取する「漆掻き」という仕事をしております。
現在、日本で採れる漆はわずかしか普及していません。
漆掻きという、先人の伝統技術を継承していくためにも毎年のこの作業は欠かせません。
工房開設から間もなく始まった漆掻きの修行先のようすや個人の取組みを、木曽漆器工業協同組合に認められ、2013年から長野県中山地区などの漆を採取できるようになりました。このことは漆業界としても大きな一歩です。県や国が漆器産地と地権者と個人の義浩を結んでくれました。小さな工房からオールジャパンを目指します。
漆といえば漆器などの小物を連想されがちですが、竹内工芸研究所では、建造物の修復(指定文化財をのぞく)や新築の床などの塗装など、大きなものの仕事が実は多いのです。
近くに漆の技術を持つ職人がいない、また誰に修理を頼めばよいのかわからない。
というケースもあります。
まだまだ拙い技術ではありますが、日本の文化を後世に残すことを念頭に日々精進しています。
木の血液ともいえる漆は、接着性、保存性にすぐれた塗料になります。採取したままの漆は生漆といって、水分を多く含む乳白色。その漆をナヤシ(かき混ぜて成分を均一にする)、クロメ(水分を蒸発させる)という精製の作業を経ると「透漆」や「黒漆」という精製漆になります。
機械精製が一般的ですが、竹内工芸研究所では手作業でおこなっています。手でクロメをおこなうと「独特の艶消し漆」になります。使い始めは艶消しでも、不思議と艶々に変化する塗り肌。木曽に伝わる手法を継承して、おおらかな漆器作りを目指しています。